
お金のやり取りが面倒だな。通帳はどのように扱えば良いの?あと、家族が亡くなると、遺品整理や葬儀、お墓など、色々と出費がかさむ。故人のためのものだから、故人の貯金を使ってもいいのかなぁ?
このような疑問・悩みにお答えします。
- 遺品整理とお金の関係
- 故人の口座からお金を下ろすのは大変
- 死亡後には、想定外の出費が増える
- 故人のお金を使う前に確認すること
個人が所有していた預貯金などの財産は、亡くなって故人になることで取り扱いが非常に大変になります。
今回は、相続人にではない私が親戚を代表して、遺品整理や見つかった預金の手続きをする羽目になった経緯をテーマにしました。
相続人ではないけど遺品整理を行うことに
親から電話があり、「介護施設に入っていた親戚が体調を崩し入院し、昨日亡くなった。」と連絡があり、続いて「親戚はみんな年寄りばっかりで動けない、お前は父親の件で慣れているから、代わりに遺品整理や手続きをやってくれ」と遺品整理や相続に関することを頼まれました。
父親が亡くなったときに、遺品整理を1回やっただけで慣れてはいないけど、唯一の経験者ということで任されました。
遺品整理業者に依頼
親戚の遺品整理を頼まれたものの、時間がないこと、お金は親戚か故人のお金を使えるだろうと思い、すぐに遺品整理の業者を頼みました。
当初は、複数の業者から見積書をとり、一番安い業者にしようと思っていましたが、インターネットで探した結果、故人が住んでいた地域が田舎だったため、遺品整理の業者は1社しか見当たらず、結局、その業者にお願いしました。
電話で遺品整理をする間取り、日程、要望などを伝えました。業者は親戚が入っていた介護施設と介護施設に入る前に住んでいた実家に来て、それぞれ部屋を下見していきました。
幸いに介護施設に入るときに多くの家具や衣類などの家財を処分していたので、遺品整理はそれほど日数をかけずに行ってもらいました。
見積書を見たら遺品整理と介護施設の部屋に置いてあった不用品の廃棄処分代で15万円でした。作業の手間を省けたと思えば致し方ない金額だと思い、依頼することにしました。
遺品整理業者との打ち合わせ
予め、遺品整理業者と打ち合わせをします。打ち合わせというよりも確認です。遺品のなかに○○があるはず、△△は絶対に捨てないでほしい、といったこちら側からの要望と、廃棄処分したものは一切お返しが出来ないし、責任がとれないことなど業者側の責任に関する確認です。
基本的に業者にお願いする以上、すべてお任せという形になりました。それが嫌だ!という人は自身で遺品整理を行うしかありません。
遺品整理の業者からの成果品
遺品整理の業者は、予め重要書類以外は廃棄してかまわないという旨を伝えていたので、当たり前ですが手慣れた作業で、残すものと廃棄するものを分けていきました。
親戚の遺品整理は2チームに分かれて行いました。1チームが介護施設での遺品整理を3時間行い、その後、もう一方のチームである実家の遺品整理に合流し、トータル1日ですべての遺品整理が終わりました。
遺品整理の業者からは、
- 預金通帳
- 銀行届出印
- 株券とその会社からの通知類
- 株主優待券
- 生命保険の契約書と生命保険会社からきた通知類
- 日記
- 写真
- 年賀はがき
- 同窓会名簿
- 介護施設入所の時の契約書
- カード類(病院の診察カードや買い物のポイントカード、Suicaなど)
- 携帯電話
が遺品整理で収取したものとして渡されました。
「個人」の口座から「故人」の口座へ
「個人」が所有していた口座が、「故人」になることで口座の取り扱いが大きく変わってしまいます。故人の預貯金は簡単に引き出せないということ、相続を証明するのが非常に大変です。
口座の所有者が亡くなることで起きる問題点
遺品整理をした結果、亡くなった親戚の預金通帳と印鑑がありました。預金通帳には普通預金と定期預金があったので、とりあえず普通預金からお金を引き出し、当面の葬儀費用に充てようと考えました。親戚はみな「それでいい」と賛同を得ました。
当然のことですが、個人が所有する口座は、原則として口座の所有者である個人(本人)しか入出金ができません。
個人の財産なので本人が生きているときはそれで問題ない、むしろ当然のことでしたが、親戚が亡くなり故人となると、その口座は凍結されてしまいます。これで誰も引き出すことができなってしまいました。
金融機関の窓口の方からは、「親戚が所有していた預金は個人個人の財産なので、たとえ家族であっても勝手には引き出しができません。それは普通預金だけでなく定期預金なども同様です。」と言われてしまいました。
銀行からお金を引き出すには
金融機関の窓口で相談すると、「故人の口座からお金を引き出すことができるのは、故人の代わりとなる相続人だけです。」ということを言われたので、自分が相続を受ける亡くなった親戚の子どもと一緒に金融機関の窓口に行きました。
「これでお金を引き出して、とりあえず葬儀ができる」と安心しましたが、そう簡単に話は進みませんでした。
金融機関の窓口で、「相続人としてお金を引き出すには、あなたが故人の相続人であることの公的な証明が必要になります。」と言われ、相続人であることを証明するために提出する書類について説明を受けました。
提出書類には、故人と相続人との関係が分かる戸籍謄本、相続人の住民票、運転免許証などの身分証明、提出や申請が嘘でないことの誓約書でした。
住民票や運転免許証は簡単に揃えられましたが、戸籍謄本は今までとったことがなかったので、申請の仕方が分からず、市役所の窓口でいろいろ聞きながら申請して、なんとか取得できました。
なお、戸籍謄本は、結婚などで戸籍が分かれていくので、故人には何人子どもがいたのか、相続人と故人との関係性などを証明するために、故人の戸籍と相続人の2つの戸籍が必要になりました。
やっとの思いで必要書類を金融機関に提出し、「今度こそ、お金が引出せる」と思っていたら、「書類の審査が必要になります。3日後に再度、お越しください」と言われてしまい、その日もお金を引き出すことができませんでした。
3日後、金融機関に行くと、今までの窓口の女性ではなく、年配の男性で「支店長」という肩書の方の対応となり、改めて故人との関係性やお金を引き出す目的などを聞かれ、やっとお金を引き出すことができました。
故人の遺品のうち、財産となるお金を引き出すということは、とっても大変です。
株や会員権なども同じ
遺品整理をしたところ、株券がしまってありました。私は株券を持ったことがなかったので、株券に書いてあった会社に電話で相談しました。会社からは金融機関同様に「相続人であることを証明しないと勝手に売買や解約をすることが出来ない」と言われました。
金融機関の手続きで時間を使っていたため、また、葬儀の準備で忙しいために、「落ち着いてから、そのうちにやればいい」と、手続きを先延ばししました。
遺品整理で、株券や会員権、その他の債権に関するものが見つかった場合には、それはプラスの財産になります。処分するための方法について確認をしないと、ただの紙切れと同じになってしまいます。
いずれの場合も、個人の口座から、故人の口座、財産になると、引き出しや手続きが大変ということを覚えておいてください。
死後の手続とお金の関係
葬儀屋さんと葬儀の相談をすると、葬儀をどうするのか、お墓はどうするのか、といろいろ聞かれました。
何も考えていなかったので、まず葬儀について親族で話をして、できるだけお金を掛けない方向で話がまとまりました。人が亡くなると、やらなければならないことが多く、お金がかかることもあります。
死後の手続にはお金がかかる
最近は、葬儀を簡易に済ませる家族葬や、後世のことを考えてお墓ではなく納骨堂への納骨など昔ほど費用が掛からない方法もあります。それでも、人が亡くなるとある程度の費用が必要になります。
特に、死亡に関しては突発的な場合が多いので、死後事務に関する費用も親族は突発的に対処しなければいけなくなります。
生命保険のなかには、死後事務のための費用をすぐに支払ってくれるケースもありますが、遺品整理に携わるような親族からすれば慌ててしまいます。場合によっては、誰がお金を立て替えるのかで親族間で揉めることもあります。
人が亡くなると、まとまったお金が必要になるということを覚えておいてください。
故人のマイナスの財産をチェック
故人の葬儀のために使うのであれば、故人の財産を使っても大丈夫だろう、という考え方が負の財産も背負ってしまうリスクがあること、それを避けるために、遺品整理ではマイナスの財産についても確認することが必要です。
故人には、まとまった預貯金があるので、そのお金を故人の葬儀代やお墓代、ハウスクリーニングや債務整理など死後事務の費用に充てればいい、と考えていました。
しかし、引き出す前に金融機関の方から、1つ、注意がありました。
「故人のお金を使うことは、故人の相続を受けるということになりますよ。それは、故人の負債も背負うという事になります。そこは、しっかりご確認いただきましたか?」
つまり、いくら故人のために故人の金を使う、といっても、故人のお金を引き出して使った段階で、あなたは「故人の相続を受ける」ことを認めたことになります。
故人が預貯金や株、会員権などプラスの財産だけならいいのですが、あとから「実は車のローンが残っている」、「旅行代金の未決済がある」など、マイナスの財産(債務)があった場合、この債務も自動的に相続されてしまいます。
プラスの財産とマイナスの財産を差し引いて、プラスの財産が多ければいいのですが、マイナスの財産が多いと、出費がかさんでしまうこともあります。
後から、こういったことがないように、遺品整理では故人の債権と債務に関する書類をしっかり確認し、相続を受けるのか、放棄するのかを判断する重要な作業なのです。
故人の預貯金を使う前に、しっかり相続について考えておきましょう。
故人の財産には手を付けない方がいい
故人のための遺品整理や葬儀費用などについては、まずは身内でお金を出し合って、負担する方が賢明です。故人のために使うからと言っても、故人の財産を使ってしまっては、相続を受けたことになってしまうからです。
相続を受けてしまうと、後から故人に負債があったことが分かっても、相続放棄ができなくなります。
相続を受けるか放棄するかは、遺品整理の結果(成果品)がでてから判断しましょう。それまでは故人の財産には手を付けない方がいいでしょう。
まとめ
相続人にではない私が親戚を代表して、遺品整理や見つかった預金の手続きする際の注意点をまとめましたが、いかがでしょうか。
遺品整理は人生で何回も経験することではありませんので、予備知識がないと分からないことも多いと思います。
遺品整理は一人で背負うのではなく、なるべく多くの人に相談しながら進めるのが良いでしょう。
- 個人が所有していた預貯金などの財産は、その個人が亡くなって故人になることで、取り扱いが大変になります。
- 故人の財産を引き出したり、使ったりするには、相続人しかできません。
- 相続人であることを公的に証明できないと、故人の財産は処分することが出来ません。
- 相続をスムーズにいくためにも、遺品整理で財産に関する書類を確認することが大切です。
- 遺品整理の業者を利用する場合は、予め分かっている財産などについては、書類の確認などをお願いしておく方がいいでしょう。
- 故人の預貯金で故人のための葬儀に使ったとしても、相続を受けるとみなされてしまいます。まずは親族などでお金を出し合った方がいいでしょう。
- 故人の財産を使う時は、遺品整理の結果でプラスの財産とマイナスの財産の確認をして、相続を受ける意向を固めてからの方がいいでしょう。