
相続放棄の期間が迫っている。期間を過ぎそうだけど何から着手すれば良いか分からない・・・。
このような疑問・悩みにお答えします。
- 期間を過ぎそうな時の対応方法
- 3ヶ月を過ぎる場合にやっておくこと
- うっかりでは済まされない期間制限
親が亡くなったなどして、ある程度の期間がたったら遺品整理をして形見分けをしようと思ったら、相続人に貸金業者から亡くなった方にお金を貸していたとして請求が来ることもあります。
このような事態にパニックになってしまい、遺産を売却して得たお金で債務を返済するのか…額によっては相続人全員で自己破産をするのか…というような事が頭に思い浮かんでしまいませんか?
相続放棄という手続きで、相続人から外れることによって、親の借金を相続しないということも可能なのですが、この相続放棄には期間があります。
もし、遺品整理に手間取ってしまって、相続放棄の期間を過ぎてしまったような場合にはどうなるのでしょうか。また、その対策はあるのでしょうか。
このページでは、相続放棄のために手間取ってしまった結果相続放棄期間を過ぎてしまい、あやうく相続放棄ができなくなった事例を見てみましょう。
相続放棄ができなくなるところだったAさんの事例
相続放棄ができなくなるところであったAさんの事例について見てみましょう。
Aさんの相続
自営業者であるAさんは、妻Bさん・子Cさん・Dさんの4人家族で、生前はカメラを趣味としており、最
新式のカメラから骨董品のものまで幅広く所有していました。
住居は賃貸でAさんの財産としては預金が100万円程度と20万円程度の評価額自動車がある程度でした。そのAさんが亡くなりました。
Aさんが亡くなった後の経過
Aさんが亡くなった後、Aさんと同居していた妻Bさん・子CさんおよびDさんは、賃貸物件に関する契約の手続きや、電気・水道・ガスに関する名義変更を手続きをすませます。
結婚して家には普段いませんが、葬儀のために実家に帰ってきていたDさんは、形見である骨董品のカメラを譲り受け、家に帰っていました。
預金については妻名義の口座で管理していた分があるので、四十九日法要がすぎるまでは特に手続きはしていませんでした。
四十九日法要において、DさんはBさんCさんから相談を受けます。
Bさん「ねぇ、D…お父さん宛てにこんな通知が届いているんだけどどう思う?」とDさんはBさんより消費者金融から父Aが借金をしていて返済が無い旨の通知が来ているのを見せられました。
最初Dさんは「どうせ、人が死んだことを町内会の掲示板とかで見たものを集めた名簿業者から買った架空請求じゃないの?放っておいて良いよ」と返事をしました。
しかし、その後自宅に、別の消費者金融からも通知がくるようになりました。BさんCさんは、信用情報機関でAさんの借金を調査できる事をインターネットで知り、信用情報機関でAさんの履歴を取り寄せたところ、Aさんは本当に借金をしていることが判明しました。
実はAさん晩年カメラ友達とパチンコに行くことにハマってしまっており、自分の収入・年金だけでは賄いきれなくなった結果、消費者金融で借金をしてパチンコをしていたのを家族に内緒にしてたのです。その額は300万円にも上るものになっていました。
借金があるのが判明してから相続放棄を弁護士に相談するまで
借金があったことは遠方に住んでいるDさんにもただちに伝えられました。
まず家族が考えたのは、Dさんが生前保有していたカメラをそのままにしているのを売却すれば借金返済の足しにできないか?という事でした。
そのため、自宅にあった最新式のカメラをすぐに下取りをすればいくらになるかを調べた上で、Dさんが形見分けに持っていった骨董に分類されるカメラがいくらの価値になるかを調べようとしました。
このカメラの受け渡しに2週間ほどかかってしまい、さらにはこのカメラが骨董品に分類されることから、鑑定に1週間ほど必要となってしまいました。
1週間後、鑑定結果から、状態が良ければ価値があったものではあるが、そのカメラは非常に状態がわるく、実際には二束三文の価値にしかならないということが判明しました。
こうして借金を相続することになったBさんCさんDさんは、良い方法が無いか?とインターネットを検索して探していたところ、相続放棄という方法にたどり着きます。
相続放棄に問題があった?
相続放棄という方法に注目し、実際にこと手続きを利用しようとしたのですが、インターネットの情報を読んでいると「3ヶ月以内に行わなければならない」ということでした。
実は民法第915条1項は、相続放棄を3ヶ月以内に行うように規定をしています。
Bさんたちは、諦めて借金の支払いを頑張ってしようか…と思っていた時にCさんがホームページ中に「3ヶ月を超えても相続放棄ができる可能性がある」という記載を見つけました。
すぐにその弁護士事務所に連絡を取り、翌日弁護士と相談することができました。
相続放棄について弁護士に相談したら
まず、BさんとCさんが弁護士に相談を行いました。
Cさん「3ヶ月を超えた相続放棄になるので、私たちのようなケースではできないのでしょうか?」
相談を受けた弁護士は、「通常の書類に加えて上申書で3ヶ月以内に相続放棄ができなかったことを説明すれば相続放棄ができる可能性がありますよ。相続放棄ができなかった理由をお伺いできますか?」
Bさん「消費者金融からの督促状が来ているのに気づいたのが、四十九日法要前後で、カメラの鑑定に時間がかかってしまったんです・・・」
実際に、信用情報機関に亡くなった人の情報を請求するにあたっては、戸籍謄本などの書類を収集しなければなりません。戸籍が遠方にあるような場合には、郵送での取り寄せが必要となり、要求される戸籍謄本を揃えるのに2週間以上かかる事も珍しくありません。
四十九日法要が終わってから、戸籍を収集、カメラを鑑定としている間に3ヶ月が過ぎてしまったのです。
弁護士は「客観的に見れば、亡くなってすぐに信用情報を見ることができるのですが、亡くなってすぐに相続の話はしないように、借金の話もしないものです。そこは裁判所も分かってますよ。むしろ、カメラの鑑定に時間がかかった点をどう評価するかになると思います。」
BさんCさんは弁護士に相続放棄を依頼し、Dさんもすぐに依頼の手続きをし、弁護士はBさんCさんDさんの相続放棄手続きに取りかかります。
信用情報機関に提出するための戸籍の収集が終わっていたので、依頼を受けてからすぐに家庭裁判所に書類を提出、照会書が送られてきて、弁護士と相談の上で返答を記載してしばらく待っていたところ、相続放棄が受理された旨の書面が届きました。
このケースの解説
まず、相続放棄はケース中でも紹介させていただいたとおり3ヶ月の期間制限があります。
この3ヶ月というのは、相続開始を知ったときからで、相続の開始は被相続人(亡くなった人)が死亡したときに開始するとされています(民法第882条)。
相当疎遠になっていない限り、葬儀等には出席しますし、できない場合でも連絡は受けることが通常です。ですので、被相続人が亡くなった時から3ヶ月と考えておけばよいでしょう。
3ヶ月というと時間があるように考える方も多いのですが、実際にはこのケースのよう四十九日法要までは必要な事はしない、といった方も多いです。
また、借金の実態を把握するために信用情報機関に被相続人の借金を調査する場合、戸籍謄本などで相続人であることを伝える必要があります。
戸籍謄本(戸籍事項全部証明書・除籍謄本・改正原戸籍謄本)の取得は、戸籍がある役所で取り寄せるのですが、戸籍が遠方にあるような場合には郵送でやりとりをします。
戸籍もさかのぼっていくつも取る必要がある場合があり、戸籍の収集に2週間くらいかかることもあります。こういった事情から3ヶ月を過ぎることはよくあるのです。
このような場合には、3ヶ月を経過したことがやむを得ないといえる事情があることを説明して、家庭裁判所がこれを認めれば相続放棄ができることになっています。
その事情の説明は、このケースのように上申書という形で行います。
このケースでは期間の経過が短かったのと、カメラの鑑定に時間がかかったという事を裁判所が認めたケースですが、どのようなケースで3ヶ月を超えても相続放棄を認めるかはケースバイケースになります。
必ず弁護士などの専門家を通すのが望ましいといえるでしょう。
まとめ
このページでは、相続放棄の期間を過ぎてしまった場合の相続放棄について、ケースをまじえてお伝えしてきました。
相続放棄は原則として相続開始から3ヶ月以内にする、という事と、気を付けないと相続放棄ができる期間は簡単に過ぎること、ただし過ぎたとしても上申書を提出すれば相続放棄ができる場合もある、という事をしっていただき、諦めないで弁護士に相談をするようにしましょう。