遺産を処分すると相続放棄ができなくなるケースを事前に理解しよう

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この記事は行政書士の監修のもと作成された記事です。
相続放棄をするための手続きを知りたい人
相続放棄をするための手続きを知りたい人

遺産を処分すると相続放棄ができなくなるの!?相続放棄をするための手続きを知りたい。

このような疑問・悩みにお答えします。

記事テーマ
  1. 相続放棄前に遺産を処分したために相続放棄ができなくなった
  2. 相続を承認していないことが必要
  3. 相続放棄は専門家に相談しながら進めること

「相続」というと、資産家がどのように財産を分けるのか・どのように相続税がかからないようにするのか?という事に注目しがちで、自分達には関係のない事と思っている方も多いと思います。

そのため、遺産の中に大きな金額になるものではないけども、転売すればある程度の金額になるようなものを、早々に処分をしてしまう、という方も多くありません。

そのような行動により、あとから借金をしている事を知ったときに、相続することができなくなることがあるのをご存知でしょうか。

このページでは、相続放棄前に遺産を処分したために、相続放棄ができなくなってしまった実例について見てみましょう。

相続放棄ができなくなってしまったAさんの事例

前提として相続の仕組みと相続放棄の概要について知っておきましょう

相続放棄前に遺産を処分したために相続放棄ができなくなったAさん、どのような過程で相続放棄ができなくなったのでしょうか。

Aさんの相続はどのような相続か

公務員を退職して老後は年金生活をしていたAさんは、妻Bさん・子Cさんの3人家族でした。

Aさんは自動車にこだわりがあり、生前は外国の高級車を乗っていました。住宅は賃貸住宅で、預金として300万円を保有していました。

Aさんが亡くなった後の経過

Aさんが亡くなった後、妻Bさんは結婚をしている子Cさんの元で世話になることになり、Aさんと居住してた住居についての遺品整理を行いました。

また、Aさんが載っていた自動車については子Cさんと遺産分割を行った後に200万円で売却を行いました。四十九日法要がすぎた頃から、知人を名乗る人から、Aさんに1,000万円のお金を貸していた、という相談をされるようになります。

最初は、BさんCさんともに、Aさんはそのような借金をするような人ではない…と思っていて相手にしていなかったのですが、従来の住所から転送されてくる郵送物をあらためて確認すると、消費者金融からの督促状も混ざっていました。

とりあえず、相続をした貯金・自動車を売却した売ったお金で返済をしたものの、それでも合計で500万円近い借金が残っているという状態になってしまい、途方に暮れたBさんとCさんはインターネットで対処方法を探していたところ、相続放棄・限定承認という方法が利用できないか模索を始め、債務整理にくわしい司法書士に相談をすることになりました。

相続放棄・限定承認はできない!?

Cさんが相続人を代表して司法書士と面談をすることになり、Cさんは亡くなったAさんの借金が発覚した経緯を司法書士に相談した上で、借金から免れるために相続放棄をした旨を告げました。

しかし、司法書士からは、本件では相続放棄・限定承認ができないことを知らされます。

そのため、BさんCさんは債務整理を利用して残った借金を支払うことになりました。

どうして相続放棄ができなかったのか

ではどうして本件では相続放棄をすることができなかったのでしょうか。

まず、相続放棄をする前提として、すでに相続を承認していないことが必要で、民法第921条所定の事項に該当することを行っていると相続を承認したものとみなされます。

本件の相続においては、Aさんの身の回りのものを遺品整理した他、高級車を200万円で売却していることから、民法第921条1号に該当する事由にあたり、単純承認したものとみなされることになります。

そのため、司法書士としても相続放棄をすることができないと判断をして、借金も相続をしたBさんCさんらに債務整理をすすめたことになります。

Bさんらはどのようにすべきだったのか

それでは、相続人であるBさんCさんはどのようにすべきだったのでしょうか。

遺品整理だけでも気を付けるべき場合がある

まず、遺品整理と自動車の売却を分けて考えてみましょう。

Aさんが居住していたところの所有物についての遺品整理をしたこと自体については、法律の形式からいうとAさんが所有していた物を廃棄するという処分をしているので、民法第921条1項所定の事項に該当するといえます。

しかし、そもそも民法921条が規定されている趣旨に鑑みれば、相続財産を処分する人は普通に相続をすることを表明しているといえるところ、亡くなった直後でその賃貸住宅に住まないような場合には、荷物を引き上げる・処分することは通常であるといえます。

そのため、遺品の中に高価なものがあって売却して価値があるようなものがある場合を除いての、廃棄のような処分については、民法第921条に該当する行為とはみられないことになっています。

日曜品・食料・衣類など利用しないようなものについては廃棄処分をしてしまっても問題はないです。

ただし、骨董品・高級な電化製品など、売却によって価値があるようなものについて、売却処分をしてお金を利用するような事をすれば、民法第921条所定の行為と評価することができます。

相続放棄をするかどうかをどうやって決めるか

ただこのケースでは財産を処分した後に借金が発覚しています。

相続放棄は3ヶ月以内の期間にすることが規定されているため(民法第915条)、債権者としては相続放棄をされることによって債権が回収できなくなるのを防ぐ趣旨で、3ヶ月を超えてから請求をしてくるケースはよくあります。

家族に黙って借金をしているような場合、そのことを家族に話さずに亡くなってしまうと、家族は借金の存在に気づかぬまま、このような処分をしてしまうことがあります。

ただ、生前に高級車に乗っていたということもあり、収支のバランスが明らかにあっていないような場合には、ひょっとしたら借金とかしていないか?という事を検討すべきかもしれません。

同様に、夜中よく飲みにいっていた、遺品の中にキャバクラのキャストの名刺があった、というような終始に見合わない行動をしているような場合には、遺品を処分してしまう前に借金があることを確認すべきといえるでしょう。

借金については、本件のように知り合いからしているようなケースもあれば、消費者金融・銀行のカードローンなどを利用しているケースもあります。

消費者金融や銀行のカードローンに関しては、亡くなったことによって支払いがとどこおると通知がくるので、そちらで気づく事ができるほか、借り入れをすると信用情報機関に登録されることになっていて、その信用情報を相続人は閲覧することができることになっています。

少しでも怪しいな…と思うことがあるのであれば、信用情報機関まできちんと調べて借金を把握しておきましょう。

相続放棄をする際には誰に相談すればいいのか

相続放棄は誰に相談をすればよい?

相続放棄をする場合には誰に相談すればいいのでしょうか。

相続放棄は一方的に相続を放棄するという風に宣言してできるわけではなく、家庭裁判所に申述をして行います。

家庭裁判所への手続きですので、法律的な手続きを相談・依頼することができる弁護士と、裁判所に提出する書類の作成代行を行う司法書士に相談することができます。

弁護士・司法書士といっても、手続事に得意・不得意というものがあり、借金の問題を取り扱っている弁護士・司法書士を探すのが妥当であるといえます。

このような弁護士・司法書士については知り合いでこのような業務についている弁護士・司法書士がいればその方に相談をすれば良いのですが、そのような知り合いがいない場合には、インターネット検索で債務整理・相続放棄+居住している地域名で検索をしても良いですし、遺品整理を検討しているのであれば、遺品整理の専門家は相続に関する専門家とも連携していることが通常なので、紹介を依頼しても良いです。

その他相続放棄に関して知っておくべきこと

相続放棄については本件のように事前に処分をしてしまうと利用できなくなることのほかに、相続開始から3ヶ月を経過しても相続を承認したとして相続放棄が出来なくなるという規定になっています(民法第921条2号)。

ただ、相続放棄を3ヶ月以内に出来なかったことに合理的な理由がある場合には、3ヶ月を経過してもできる場合もありますし、資産・調査が長引きそうなときは期間を延ばすことも可能です。

相続放棄が頭に浮かぶような事態になった場合には早めに専門家に相談するのが良いといえるでしょう。

まとめ

このページでは、相続放棄について相続放棄前に資産を処分してしまったため、相続放棄ができなくなったケースについてお伝えしました。

なかなか生前に家族に内緒にしていた借金については、相続開始直後に露見しないということもあり、遺品処分によって一緒に価値のある財産もさっさと売却してしまうということはよくあります。

相続放棄が必要になる場合の察知の仕方などを確認した上で、遺品整理時にも気を付けるなどして注意をするようにしましょう。

この記事を書いた人

つの

旧司法試験短答式試験合格後、都内の法律事務所でパラリーガルとして10年以上勤務。法律系ポータルサイト運営会社・マーケティング会社勤務・人材マーケティングなどを経てフリーランスでライターとして活躍している。得意分野は、法律・マネー・取材。

経歴

  • 旧司法試験短答式試験合格
  • 行政書士試験合格
  • 法律事務所・司法書士事務所パラリーガル
  • FP技能士2級合格

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