
遺品整理をしたら相続放棄ができなくなった?注意すべきことを知りたい・・・。
このような疑問・悩みにお答えします。
- 相続放棄は相続開始を知ったときから3ヶ月以内に行うのが原則
- 相続放棄前には相続財産を処分しない
- 遺品整理で失敗!注意すべきケース
親が亡くなって相続が発生したときに、現金や不動産などのお金になる財産を相続する場合ならば良いのですが、亡くなった人が多額の借金をつくっていたような場合には、多額の借金を自分が相続をして支払わなければならないような場合もあります。
しかし、相続でした借金は相続放棄によって払わなくてよくなるのですが、実は遺品整理をすることによって相続放棄ができなくなるような場合もあるのをご存知でしょうか。
このページでは遺品整理をしたことによって相続放棄ができなくなる仕組みを、事例とともに確認しておきましょう。
遺品整理で相続放棄ができなくなったAさんのケース
それでは、遺品整理で相続放棄ができなくなったAさんの家族の相続の事例を見てみましょう。
Aさんの相続
Aさんは公務員として長年勤めて退職し、妻Bさんと暮らしていました。AさんBさんには子Cさんがいました。
子Cさんはすでに独立して生計を営んでおり、結婚して妻と子と一緒に自宅で暮らしています。Aさんが亡くなって、BさんCさんが相続人となり、特に遺言はなく常どおりの相続が開始しました。
Aさんの遺品をただちに処分
AさんBさんは公務員を退職後は、老後は田舎で暮らしたいという希望があり、引っ越した先で賃貸住宅に移り住んで年金で暮らしていました。
Aさんの死後にBさんは子Cさんと一緒に暮らすため、賃貸物件を引き払うことになりました。
Aさんは運転免許を保有していたので自動車に乗っていましたが、Bさんは免許を持っていません。
Aさんの自宅にはCさんがときおり孫を連れて訪問することがあったので、Aさんはみんなで車に乗れるように、少し大きめのタイプの自動車を購入していいました。
Bさんは運転免許をもっていませんし、Cさんも自分の家ですでに自動車を保有していたため、この自動車は不要ということになりました。
またAさんの遺品の中には高級腕時計などもあり、売却すると15万円くらいのものでした。
不要になるものを整理するために、遺品整理の会社を利用したのですが、自動車や腕時計の売却も依頼できるとのことだったので依頼をしました。
遺品の整理をスムーズに終わらせたBさんはCさんの家に迎えてもらって新しい生活をはじめることになりました。
借金の督促が入るようになる
Aさんが亡くなって2か月ほどした頃から、Aさん宛てに旧の住所に消費者金融から督促状が届くようになりました。
最初はBさんもCさんも「Aさんが消費者金融から借金なんてするわけがない」と、相続につけこんだ架空請求であると考え、これを無視していました。
しかし、実際にはAさんは生前、友人に誘われたパチンコにすっかりはまってしまって、自分の使える分では足りないほどになっており、消費者金融から借金をしていたのでした。
BさんとCさんは、これは本当にAさんは借金をしていたかもしれない…と、消費者金融に連絡をしたところ、その会社からは50万円の借り入れをしていた事が判明しました。
BさんCさんは借金の全容を把握するために信用情報機関に借金の総額について照会をしたところ、なんとその他に銀行や信販会社などからも借り入れをしていたことが判明し、合計で500万円もの借金をしていました。
Aさんの遺産は、預金が150万円の他には、売却した車が30万円程度の値段がついていたのと、高級腕時計が10万ほどの値段です。
500万円の借金には、死後支払いをしていなかったことから発生する遅延損害金などもつきはじめており、放置をするとどんどん借金が膨らむ…という状況でした。
そこでBさんとCさんは対応についてインターネットなどで調べていたところ、債務整理や相続放棄という方法を目にするようになり、まもなく相続放棄の期間である3ヶ月を過ぎそうだったため、すぐに弁護士に相談をすることにしました。
弁護士との相談結果相続放棄はできないということに
BさんとCさんは弁護士事務所で相続放棄について相談をしますが、弁護士からは「この状況では相続放棄はできない」という事を告げられます。
「どうしてですか?」とBさん・Cさんは弁護士に聞きましたが、「すでに遺品整理を行っている状況なので、法律的にはBさん・Cさんはすでに相続は承認したということになってしまう、との回答でした。
そのため、BさんとCさんはやむなくAの遺産とそれぞれの貯蓄を切り崩し、借金を返したのでした。
どうしてAさんの事例では相続放棄をすることができなかったのか
ではAさんの事例ではどうして相続放棄をすることができなかったのでしょうか。実はその原因はBさんとCさんが行った遺品整理に原因があります。
単純承認をした後には相続放棄をすることはできない
相続を承認した後は相続放棄ができなくなるのですが、民法第915条所定の事を相続人が行うと、相続を承認したものとみなされます。
そして、民法第915条1号では、「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」とされており、今回のAさんの遺品整理によって単純承認したものとされてしまったのです。
遺品整理をしたら全く相続放棄ができなくなるの?
実はいかなる遺品整理によっても民法第915条が適用されて遺品整理できなくなる、というわけではありません。
民法第915条に規定されている、相続財産の処分によってなぜ相続を承認したかという事を考えますと、相続財産の活用を初めていることから、そのような段階から相続放棄をするという態度は矛盾しているといえるからです。
厳密に遺品や遺産といっても、本件で問題になった自動車や高級腕時計など売却して価値のあるようなものから、生活用品など廃棄の対象になるものまで様々です。
そのため、民法第915条が適用される相続財産の処分といえるためには、相続財産自体に価値がある、具体的には売却して価値のあるものであるということ必要です。
Aさんの相続ではどのようにするのが良かったのか
それではAさんの相続ではどのようにするのが良かったのでしょうか。
本件ではBさんがCさんと一緒に暮らすために、遺品整理を急いだという事情がありました。たしかに賃貸物件ですので、借りたままにしておくとどんどん費用がかさむものになります。
しかし一方ですべての遺品を処分すると自動車・高級腕時計など処分すると価値のあるものも対象に含まれてしまいます。そのため、いったん廃棄をすることが妥当であると考えられるもの以外については相続放棄に備えてすぐに売るのではなくしばらく保管するのがよかったといえるでしょう。
このような相続放棄の相談は誰にすればいいのか
BさんCさんは今回の相続・相続放棄について相続放棄を思い立ってから弁護士に相談をするまで、すべてインターネットでの情報に頼っていました。
実は相続に関しては様々な専門家が居るので、インターネットで調べただけでは自分の悩みに対して誰が解決をしてくれるのかが分かりづらい、という事があります。
この相続放棄に関しては誰に相談して解決すべき問題なのでしょうか。
相続放棄は一方的に「相続を放棄しますのでお支払いはできません!」と債権者に告げれば良いというわけではなく、家庭裁判所に申述をして行うことになっています。
このような手続きの事を法律上は「法律事務」と呼んでおり、弁護士法という法律で報酬を得て代行ができるのは基本的には弁護士ということになっています。
ただ特別に司法書士は裁判所への提出書類を代行することが認められていますので、司法書士にも相談をすることができます。
ただ、相続に関しては弁護士・司法書士のみならず行政書士・税理士などの他の相続に関する事務を取り扱う士業や、銀行・保険会社などの金融機関、遺品整理業者などは相互に協力している事がよくあります。
ですので、誰と接している時でも構わないので、心配なことや聞いてみたいことがある場合にはどんどん質問をするのが良いといえるでしょう。
まとめ
このページでは遺品整理をしたことによって相続放棄ができなくなる場合を、ケースとともにお伝えしてきました。
賃貸住宅に居る方が無くなったような場合で、引き続きそこに住むわけではないような場合には、さっさと遺品整理をしてしまうようなことが考えられますが、それによって相続放棄ができなくなる場合を知っていただいた上で、不安があるような場合には早めに専門家に相談して、相続放棄ができなくなるような事がないように手続きをすすめていくようにしましょう。