相続放棄をするなら遺品整理に注意が必要!?よくあるトラブルとは?

トラブル
この記事は行政書士の監修のもと作成された記事です。
相続放棄と遺品整理で迷う人
相続放棄と遺品整理で迷う人

遺品整理が原因で相続放棄出来なくなるって本当?相続放棄する時、遺品整理の注意点を知りたい。

このような疑問・悩みにお答えします。

記事テーマ
  1. 亡くなった後、遺品整理をすることによって相続放棄ができなくなる
  2. 相続放棄の実例に基づく遺品整理の注意点を知る
  3. よくある5つの相続放棄トラブル事例

亡くなった人に多額の借金・債務があるような場合や、相続に関わりたくないという場合には、相続放棄という制度を利用して返済義務から免れることができます。

しかし、遺品整理が原因で相続放棄ができなくなり、債務の返済をしなければならなくなった、相続人から訴訟を起こされた、というような事が発生することをご存知でしょうか。

このページでは、相続放棄をする場合に遺品整理をするにあたっての注意点をお伝えします。

相続放棄の概要

相続放棄の概要

まず、相続放棄がどのような制度かを確認しましょう。

相続放棄とは、家庭裁判所での所定の手続きを経ることによって、相続人ではないという扱いにしてもらう制度のことをいいます。

相続放棄という制度の必要性

このような相続放棄という制度はどうして必要なのでしょうか。

相続というと、お金や土地・建物などの財産を分けるというイメージを持っている方も多いと思うのですが、正確には亡くなった方(被相続人)の地位を相続人が引き継ぐというものです。

現金・不動産という財産の所有者である地位を引き継ぐのはもちろんですが、マイナスの財産である借金・負債を支払う地位も引き継ぐことになります。

亡くなった人が株式会社の代表者などの商売をしている場合に、会社の債務の保証をしている場合や、個人事業主であるような場合には個人で多額の借り入れをしているようなこともあります。

このような地位を相続すると、自分が借り入れをしたわけでもないのに多額の金銭を返済しなければならず、支払いができないのであれば自己破産をしなければならないとなってしまいます。

また、相続するのがプラスの財産である場合でも、相続人同士が対立しているなどで、相続に関わりたくない、という場合もあります。

このような場合に相続放棄をすることによって、相続人では無いという取り扱いをしてもらえるので、借金・負債を相続しなくなりますし、相続争いから離れることができるという事になります。

類似の制度である限定承認

負債を相続しないという点で類似の制度としては限定承認があります。

限定承認とは、相続自体は承認するが、もし相続した財産よりも負債の方が多い場合には相続しない、とするものです。

同じように家庭裁判所に申し込みを行うものですが、相続放棄は個々に行うことができるのですが、こちらは相続人全員で行う必要があります。

相続放棄の手続きはどのようにするか

相続放棄の手続きは家庭裁判所に申し込みをして行います(申述といいます)。

申述は、被相続人(亡くなった方)の住所地を担当している家庭裁判所に対して行います。

相続放棄の申述は、申述書を添付書類・収入印紙・郵券を添えて提出をして行います。申述書は裁判所のホームページでダウンロードすることが可能です。添付書類相続人が誰かによって細かく異なります。被相続人が死亡したことを証明するために、被相続人の住民票除票か戸籍附票は必ず提出します。

あとは、被相続人と相続人の親族関係を証明するために、戸籍謄本(戸籍事項全部証明書・除籍謄本・改正原戸籍謄本など)を集めます。

基本的には被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍を集め・相続人となる人の現在までの戸籍を集めることになります。

相続放棄でトラブルに?実例に基づく注意点を知る

では相続放棄においてどのようなトラブルが発生しうるのでしょうか。実例に基づいて相続放棄の注意点を見てみましょう。

事例①遺品整理をしている間に相続放棄ができる期間を過ぎてしまった

事例①遺品整理をしている間に相続放棄ができる期間を過ぎてしまった

概要

Aさんは美術品の収集が趣味の方で、所持しているものに骨董品・絵画・美術品などがあり、自宅で保管しきれないものはレンタルしている倉庫で保管していました。

Aさんが亡くなった後、相続人に消費者金融から多額の借り入れがあると請求があり、これらの美術品を売るための鑑定などの手続きを依頼していました。

鑑定に時間がかかり、相続人に対する消費者金融からの請求の頻度が多くなってきたので、相続人は相続放棄をしようと思ったのですが、この時点で5か月が経過しており、相続放棄ができなくなってしまいました。

行政書士による解説

Aさんの相続人のケースでは、遺品整理をしている間に相続放棄に必要な期間を経過していたものになります。

相続放棄は相続の開始を知った時から3ヶ月以内に行わなければならず(民法第915条1項)、この期間を経過した場合には相続人は相続を承認したものとみなされます(民法第921条)。相続の開始は、被相続人が死亡したときに開始します(民法882条)。

相続人が被相続人と疎遠になっているような事がない限りは、死亡をした事をしっているので、この時から3ヶ月で相続放棄ができなくなる、というのがこの規定です。

対策

家族に内緒で借金をしている方は多く、亡くなって初めて借金をしていることを相続人が知るという事も珍しくありません。

そのため、3ヶ月の期間(熟慮期間ともいいます)の間に財産の調査が終わらないという事もあります。

また、借金自体の調査が住んでいても、Aさんのように遺産の額の調査が終わらないという事もあるでしょう。この期間に相続放棄の申述が難しい場合には、事前に家庭裁判所に申し出て期間を延ばしてもらう「相続の承認又は放棄の期間の伸長」という手続きが別途ありますので、それを利用します。手続は相続放棄と同じく、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。

また、貸金業者も取り立てを行わなければならないので、相続放棄の期限を過ぎてから取立を行うことがあります。そのため、3ヶ月の期間の後に借金・負債の存在に気付くことができたという事もあります。

このような場合には、3ヶ月経過したことに合理的な理由があれば、期間経過後も相続放棄ができる場合があります。家庭裁判所への申述にあたっては、期間経過したことを説明する上申書を一緒に提出することになります。

事例②相続放棄をする前に遺産に手をつけてしまった

事例②相続放棄をする前に遺産に手をつけてしまった

概要

Bさんの遺産としては家・土地などの不動産・自動車・有価証券と一緒に貴金属があり、相続人のうちの一人が、他のものはいらないので、Bさんが大事にしていた時計を欲しいと主張し、形見分けをしてもらった時計を売却してお金に換えました。

しかし、Bさんにこれらの資産を大幅に上回る借金がある事が発覚したので、相続放棄をしようと思ったのですが、時計を売却した相続人の一人は相続放棄ができなくなってしまいました。

行政書士による解説

相続放棄は、相続を承認した後にはできなくなってしまいます。
Bさんの相続人の方は、時計を形見分けしてもらって売却してしまっていますが、これによって民法第921条所定の「相続財産の全部又は一部を処分した」と評価されてしまい、相続を承認してしまったとみなされる事になります。

対策

形見分けを受けた財産をすぐに売却・処分してしまいたい、というようなケースもありますが、上記のように相続放棄をする事ができなくなってしまう事があります。
相続財産といっても、たとえば被相続人と相続人が同一の世帯で暮らしているような場合には、被相続人が亡くなった後に、相続人が生前所有していた生活用品を処分するようなこともあります。
そのためすべての財産の処分が民法第921条に該当するというわけではないのですが、Bさんのケースのように明らかな高額品の場合には相続をするものと評価できることになるため、このようなものを処分する場合にはきちんと調査を行ってからにしましょう。

事例③遺品整理を行ってしまった

事例③遺品整理を行ってしまった

概要

Cさんは夫に先立たれてから賃貸アパートに一人で暮らしていました。Cさんが亡くなった後、相続人である子二人で、賃貸アパートにあったものを遺品整理業者に依頼して持ち出してもらいました。

相続人としては資産になるようなものはなく、ただ高価な着物があるな…程度で考えていました。相続をして数ヶ月後、貸金業者からCさんがしていた借金の返済を迫られたため、相続放棄をしようとしましたができなくなりました。

行政書士による解説

相続放棄ができない原因は2と同じで、民法第921条によって単純承認をしたものとみなされます。特定の財産ではなく、財産を一斉に遺品整理に出した場合でも、形式的には相続人として処分したことになります。

対策

賃貸アパートを借りたままにしているような場合には、どうしても費用がかかってしまいます。

遺品整理の対象になるものに高価なものがある場合には、中にあるもので明らかにゴミであるもの以外は一度倉庫などに保管しておくことが望ましいといえるでしょう。

事例④相続放棄後に勝手に処分してしまった

事例④相続放棄後に勝手に処分してしまった

概要

生前自営業であったためにDさん名義で商工ローンから借り入れをしている借金があったので、Dさんが亡くなった際に相続人は相続放棄をしました。

その後の相続財産管理人が選任され、相続財産を調査していたのですが、Dさんがローンで買っていた腕時計の行方が分からなくなっていました。

調査の結果、相続放棄後にDさんの相続人がこれを処分してお金に換えていることが判明して、その方は単純承認されたものとみなされることになってしまいました。

行政書士による解説

相続放棄をした後に相続人は財産の管理をしなければならず、後に相続財産管理人が選任されればこれに引き継ぎを行います。

この間に相続財産を相続人が隠したり、使い込んだりすると、民法第921条3号によって単純承認したものとみなされることになります。

対策

相続放棄をした後には、その財産は自分たちのものではありません。

管理に必要な支出があるような場合には、使い込んだと評価されないためにも、利用した財産と支出した額を記録にとっておくようにしましょう。

事例⑤孫に相続させるために相続放棄をしてしまった

事例⑤孫に相続させるために相続放棄をしてしまった

概要

Eさんは生前不動産を所有していましたが、Eさんと相続人の一人が孫に相続をさせておきたいという話し合いになり、死後にその方は相続放棄をして孫に相続を譲ろうとしました。

そして、実際にEさんが亡くなった後、相続人は相続放棄をしました。実際に遺産分割になると、相続を放棄した方の孫は遺産を相続できませんでした。

行政書士による解説

相続開始前に相続人が亡くなっているような場合には、代襲相続といって孫が相続できる制度があります(民法第887条2項)。

しかし、相続放棄をした場合には代襲相続は発生しないとされており、孫は相続をしません。

対策

どうしても孫に相続をさせたいような事情があるような場合には、遺言で孫を相続人として指定する、孫を養子に迎えて相続人にする、という方法があります。

まとめ

このページでは相続放棄の注意点についてお伝えしてきました。

亡くなった後の遺品整理をすることによって相続放棄ができなくなるなど、注意が必要な手続きですので、専門家に相談することも一つの手です。

遺品整理の際に気になることがあれば、遺品整理会社の担当者に相談してみれば、弁護士などの法律の専門家を紹介してもらえます。

この記事を書いた人

つの

旧司法試験短答式試験合格後、都内の法律事務所でパラリーガルとして10年以上勤務。法律系ポータルサイト運営会社・マーケティング会社勤務・人材マーケティングなどを経てフリーランスでライターとして活躍している。得意分野は、法律・マネー・取材。

経歴

  • 旧司法試験短答式試験合格
  • 行政書士試験合格
  • 法律事務所・司法書士事務所パラリーガル
  • FP技能士2級合格

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